全身性エリテマトーデス(SLE)の病態
全身性エリテマトーデス(SLE)は、type III hypersensitivity(免疫過剰反応 III型)の代表的疾患です。type III hypersensitivityにはSLEのほかに関節リウマチ、多発性血管炎、溶連菌感染後腎炎などがあります。
このタイプの慢性炎症疾患は、自分の組織(自己抗原)に対して抗体(自己抗体)ができます。 この自己抗原―自己抗体が補体という細胞膜を破る障害性の高いタンパク質を活性化し、腎臓、肝臓、皮下組織などの自己組織を傷つけます。
本来は自分の組織に対して反応する自己抗体は除外されるのですが、慢性炎症の引き金と考えられている感染症や炎症の進行の過程で、自己組織が異物とみなされてしまうことが起こります。
全身性エリテマトーデス(SLE)は、女性に多いことが特徴です。これは卵巣から分泌されるエストロゲンが自己抗原―自己抗体の免疫複合体を除去することを阻害していると想定されています。
寿命が尽きた細胞、感染細胞やガン細胞など排除される死細胞の除去機能が低下(マクロファージの貪食作用機能低下)するために、その死細胞に対する自己抗体が全身性エリテマトーデス(SLE)の発症に関与していることがマウスの実験などで明らかになっています。
マクロファージの貪食作用からもれた死細胞の核酸成分が抗原となって、最終的に1型インターフェロンが誘導されループス腎炎などの慢性炎症が起こります。
SLEでは、C3bなどの補体とよばれるタンパク質が低下します。C3bは炎症後の死細胞を処理する機能があります。この補体が少ないことは、排除されるべき死細胞の除去機能が低下することを意味しています。