パレオ協会Q&A 『脂肪組織由来幹細胞移植について』
脂肪組織由来幹細胞移植についての基本的な回答をシェアいたします。
(ご質問)
お世話様です。 いつも学びと世界情勢をありがとうございます。
「自己培養脂肪由来幹細胞を用いた脂肪組織再生術」というものが最近話題になっています。
自身の血液と脂肪を採取し、採った脂肪から脂肪由来幹細胞を分離し、血液から採った血清を治療に必要な細胞数まで培養し、その後、再度自身の脂肪を採取し、その脂肪と培養した幹細胞を混合してそれを点滴にしたり、また、美容の観点からは若返りに皮膚に注射したりするものです。
本人の一番若い時の(採取時点では一番若い)細胞なので元気になったり、皮膚が若返るとうたっている治療法なのですが、先生はどう思われるでしょうか?
海外(特に中国人のお金持ち)の方が日本にきて点滴を打っているという事ですが、信ぴょう性はどうなのでしょうか?
お忙しい処恐縮ですが、教えて頂けたらと思い質問させていただきました。
どうぞ、宜しくお願いいたします。
お忙しいところ申し訳ありませんが、よろしくお願いいたします。
(回答)
・自己の脂肪組織の幹細胞を取り出して、自分の体の一部位に移植する方法(Autologous fat grafts、adipose-derived stem/stromal cells (ASCs) transplantation)は、形成外科の軟部組織再建術で使用されるようになっています。しかし、移植部位がしっかりと生着しない結果が出ています(The fate of the adipose-derived stromal cells during angiogenesis and adipogenesis after cell-assisted lipotransfer. Plast Reconstr Surg. 2018;141:365–75)。
・脂肪組織由来幹細胞(ASCs)は、脂肪、筋肉、骨、軟骨細胞だけでなく、神経、心筋、肝臓の細胞にも分化する能力を持っています。つまり、周囲の環境によって、異母なる細胞へ変化する可能性も秘めていることになります。さらに、脂肪組織由来幹細胞は、様々な成長因子やサイトカインと呼ばれる細胞を刺激する物質を放出します(Fat grafts enriched with adipose-derived stem cells. Arch Craniofac Surg. 2020 Aug; 21(4): 211–218)experience of the California Poison Control System. Journal of Clinical Pharmacy and Therapeutics, 2014, 39, 73–77)。
・そのため、移植した部位での癌組織の発生の可能性があります(Oncologic safety of fat grafting for autologous breast reconstruction in an animal model of residual breast cancer. Plast Reconstr Surg. 2019;143:103–12)(Fat grafts enriched with adipose-derived stem cells. Arch Craniofac Surg. 2020 Aug; 21(4): 211–218)experience of the California Poison Control System. Journal of Clinical Pharmacy and Therapeutics, 2014, 39, 73–77)。
・以上のように、幹細胞移植では、周囲の環境(糖のエネルギー代謝依存)によって、ガンを含めたあらゆる細胞に変化します。現代医学は、幹細胞を望ましい細胞へ導くための環境のコントロール方法を全く知らないため、幹細胞医療は失敗するでしょう。
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