膠原病の治療で使用されるステロイドについて
現代医療の一般的治療法
膠原病の症状を抑えるために対処療法として、ステロイドは現代医療でなお中心的な薬物治療の柱です。しかし、臨床応用後50年経った現在でもステロイド治療による副作用の問題が解決されていません。
ステロイドの薬理機序
ステロイドは細胞膜を通過して、細胞質内でレセプター(グルココルチコイドリセプター<GR>)と結合します。結合したレセプターが遺伝子レベルで免疫系を抑制すると推測されています。
ステロイド治療の投与指針
疾患活動性が高い(膠原病の症状が激しく出ている)急性期には、連日で一日2~3回に分割投与します。SLEのループス腎炎では一回投与でも良いとされています。
膠原病の症状が改善し、疾患活動性が低下したことを確認した上で減量していきます。減量の目安は1~2週間で10%。ただし、副作用の症状が強く出た場合は、急速な減量をします。
ステロイド治療中は、出産や手術などのストレスがかかるときには一時的に増量を必要とすることがあります。また、胎盤を通過しにくいので、妊婦に使用される薬剤である。
ステロイド薬の投与方法
基本的に1錠が健康な成人の一日分泌量に相当(コルチゾール20mg)するように作られています。
静脈注射製剤の場合、一部がそのまま肝臓で処理され、腎臓から排泄されますので、経口の錠剤より10%増量することが勧められています。
- ステロイドパルス療法
大量の水溶性ステロイド薬(メチルプレドニゾロン 400~1,000mg)を原則的に3日間点滴静脈注射を数週ごとに反復する治療です。
リメタゾン(商品名)は、炎症部位へ選択的に集積するように作られたもので、2週間に1度の投与で炎症症状を軽減する効果が持続すると期待されています。これは、脂肪粒子内にデキサメタゾン2.5mg(1アンプル中)を封入した静脈注射製剤です。
- 関節腔内注射製剤
関節リウマチの関節炎症状に対しての治療です。トリアムシノロンアセトニドなどの難溶性のステロイドエステルを使用します。原則として、同一関節内に注射する間隔は4週間以上あける。
ステロイドの副作用
ステロイドは脂溶性であり、レセプターが全身の細胞にくまなく存在するために広範囲の組織に速やかに分布し、作用します。細胞のミトコンドリアに作用します。
- *感染症
ステロイド大量投与の場合、真菌、カリニ肺炎、サイトメガロウイルス感染、結核などに注意しなければいけません。これらは、エイズの患者さんが罹る感染症と同じです。
- *骨粗しょう症
ステロイドでの骨粗しょう症は、海綿骨含量の多い椎骨・肋骨で強く認められます(腰椎・胸椎の圧迫骨折が多い)。プレドニン7.5mg/1日以上を6ヶ月以上の投与で骨折の頻度が上昇するといわれています。
- *糖尿病
肝臓で糖新生といって糖の産生が高まります。また末梢組織でのインスリン抵抗性を高めます。
- *消化性潰瘍
- *動脈硬化
- *副腎不全
ステロイドを急激に中止した場合や外傷・感染などのストレス時におこります。長期間のステロイド薬治療は、脳下垂体・副腎系を抑制してしまいます。ステロイド減量後、回復には9ヶ月以上を要します。
- *無菌性骨壊死
大腿骨頭、上腕骨頭、距骨に比較的早期に起こります。
- *精神症状
- *その他
中心性肥満、満月様顔貌
ステロイドの副作用について
慢性炎症疾患の方にはイライラ、焦燥感、敵意、うつ症状などが少なからず認められますが、これらの症状はステロイド使用による脳への副作用でもあります。ステロイドを減量していくとこのような精神症状がなくなる方もおられます。
さて、日本には
「可愛い子供には旅をさせよ。」
という教訓が古くからあります。
これには二つの深い意味が隠されています。
1.幼少時には十分愛情をかけて面倒を見てあげること。
2.親離れの時期が来たら、そのときには過保護は危険である。多少の苦労をさせなければ外界でのストレスに耐えられない。
というものです。
皆様、ご存じでしたでしょうか?
ステロイドというのはこの可愛い子供(感染などで炎症が起こっている自分の細胞)を過保護にするものです。炎症という多少の苦労をさせないとストレス耐性(ストレスタンパクという防壁を築けない)ができません。
可愛い子供に悪い誘いや危険が及ぶときには、両親は目を光らせて、一時的に過保護にしておかなければいけません。細胞の炎症についても全く同じです。
あまりにも強い炎症が続くとフリーラジカルが増大し、周囲の組織まで破壊されていきますので、一時的にステロイドで過保護にすることも必要なときがあります。
これが「ステロイドパルス療法」というもので、数日間に限って、大量のステロイドを投与するものです。嵐が去った後は、持続的にステロイドを投与することはありません。それは逆にストレス耐性を下げてしまうばかりでなく、感染を拡大してしまうからです。
一見治癒効果を認めるような量のステロイド(グルココルチコイド)を投与すると必ず、慢性感染症、骨粗鬆症、糖尿病、うつなどの精神症状を出します。
これは、まさにストレス耐性が下がった、つまり過保護による副作用です。
私が唯一、この例外として認めているものは、比較的高齢者の慢性炎症疾患に対するステロイドの少量持続投与(プレドニンとして1日5mgまで)です。
比較的高齢者の慢性炎症、老化、ガン、血管障害などの中にはあきらかな感染源がなく、また細胞内感染のように証明ができない類の感染(外因性の引き金)があったとしても、それよりも内因性の引き金であるミトコンドリアのフリーラジカル(活性酸素)発生によって持続的に炎症反応、ストレス反応が繰り返されていることによる酸化ストレスにされられているものがあるからです。
ちなみにほとんどの医師がご存知ないのですが、医学的には経口プレドニゾロン20mgを2週間以上で重篤な「免疫抑制状態」とみなします。
つまり、AIDSや白血病、ガンなどで免疫力が極端に低下している状態と同じとみなすのです。
この量のステロイドを服用している方には生ワクチンなどは接種できないことになっています(生ワクチンそのもので感染してしまうという理由からです)。