医薬品の副作用★医薬品の作用機序と薬理動態

医薬品の副作用を考える場合には、まず医薬品の作用そのものを知っておく必要があります。ここでは、医薬品の作用機序と薬理動態を簡単におさらいします。

医薬品の作用機序

医薬品の作用機序はそのまま副作用の作用機序となります。

それでは医薬品の作用機序を見ていきましょう。

現在使用されている医薬品のほとんどは私たちの体内のタンパク質に働きかけます。

以下の2つに分類できます。

  1. 異常な働きをするタンパク質の作用を抑える
  2. 正常な働きをしないタンパク質の作用を補う

1の例では

リウマチ、膠原病などの慢性炎症疾患で異常に働く炎症性サイトカインというタンパク質の働きを抑える医薬品(ステロイド、抗リウマチ薬、生物学的製剤)など

2の例では

糖尿病で使用されるスルホニル尿素剤のようにインシュリンの分泌を促すものがあります。

医薬品の薬理動態について

1.医薬品の透過性

医薬品は細胞内に入る前に細胞膜を通過しなければなりません。細胞膜は脂質成分がありますので、脂質に拡がっていく性質(能力)がないと細胞内まで到達しません。またイオン化している医薬品は水溶性で、イオン化していない医薬品は脂溶性です。したがって、イオン化していない医薬品しか細胞膜を通過することができません。

一方医薬品を排泄するときには、イオン化しているものしか排泄できません。尿という水溶液に溶ける必要があるからです。

2.医薬品と血漿タンパク質の結合性

医薬品を服用あるいは血管内投与すると、血液中のタンパク質(アルブミン)と結合します。実は、効果をしめす医薬品は血液中のタンパク質と結合していない、フリーの状態のものだけです。

たとえば、血栓形成を阻害するワーファリンという医薬品があります。ワーファリンは98%が血液中のタンパク質と結合しています。残りの2%のみが薬効があるということです。

このとき、血液中のタンパク質が極端に低下していたり(低栄養、肝臓障害)、あるいは他の薬物で血液中のタンパク質が占領されているとどうなるでしょうか?フリーのワーファリンが増加するために効きすぎることになります。ワーファリンの場合は、脳内出血や消化管出血などが起こります。

3.医薬品の吸収

医薬品の吸収率つまり、血管内にどのくらいの割合で入るかで薬効が変わってきます。医薬品を血管(静脈)内に投与すると、100%吸収です。ですから点滴や静脈内注射は薬効が高いのです。逆にいうと副作用も強く出ます。

これが内服ではどうでしょうか?

口から入った医薬品は腸から吸収されて肝臓の門脈へ運ばれます。実は肝臓で素早く医薬品が代謝されるため、一部の薬効がなくなります。肝臓で医薬品が最初に素早く代謝されたあとに全身へと運ばれていくのです。

4.医薬品の分布

医薬品が血液内に吸収されたあとは全身に分布します。脂溶性の医薬品は脂肪組織に蓄積されます。ビタミンA、Dなどは脂溶性のビタミンですが、ある一定量を越えると中毒症状が起こります。これは脂肪組織に溶け込んで蓄積するからです。

一方の水溶性の医薬品は尿、汗あるいは胆汁として排泄されます。ビタミンC、ビタミンBなどは尿などから排出されますので、中毒症状は出ません。

5.医薬品の生体内での変化

ほとんどの医薬品は肝臓、腎臓、肺、腸管などの臓器で代謝されて、排泄しやすい水溶性になります。したがって、体内の水分が非常に重要になります。脱水であれば、医薬品の代謝物の排泄が滞るために、副作用が起こります。

ほとんどの医薬品が代謝されると薬効のない代謝産物になり、排泄されます。しかし、なんらかの薬理作用をもつ代謝産物が産生される場合があります。たとえば、睡眠薬、抗不安薬とよばれるベンゾダイアゼピン系薬物にジアゼパム(セルシン)があります。これは代謝された産物が長期作用型の中枢神経抑制薬となります。

また薬理作用がないプロドラッグが代謝されてはじめて薬理作用をもつ医薬品となるように設計されたものもあります。

生体内では医薬品の大半は肝臓で代謝されますが、大別して2つの過程に分かれます。

  1. フェーズ1
    酸化還元、加水分解が主に肝臓の細胞内のサイトクロームP450という酵素によっておこなわれます。アルコールはアルコールデハイドロゲネースという酵素で酸に代謝されます。

    サイトクロームP450は抗けいれん剤、リィファンピシン(抗結核剤)、ステロイド、慢性アルコール服用によって誘導されます。つまり、サイトクロームP450が多くできるために、医薬品の代謝能力が高くなります。期待したほど薬効がないのは、これらの医薬品との飲み合わせがないかチェックしましょう。

  2. フェーズ2
    抱合とよばれる作用です。肝臓のグルクロン酸抱合が代表で、医薬品が胆汁中に排泄されます。

6.医薬品の排泄

腎臓で尿として排泄されます。血液中のタンパク質と結合している薬剤は尿として排泄されません。腎臓の血流量や腎臓の機能によって医薬品の排泄量が変化します。当然、腎臓の機能が障害されていれば、医薬品あるいはその代謝物が蓄積することになります。

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