医薬品の副作用★医薬品の副作用の分類

患者さん側から見れば、病を治す以外の作用はすべて副作用と表現されます。薬理学的に見れば、主作用に対する別の作用(side effect)、好ましくない作用(adverse reaction)、量が多いことにより生じる作用(中毒)、与薬量と関係なく生じるアレルギー、ショックなどもすべて副作用と考えて良いでしょう。

臨床上は人体に薬用量(添付文書に記載されている用法・用量)で使用した場合に起こる治療上好ましくない作用と定義です。人体に定められている薬用量を越えたときに起こる有害作用は副作用ではなく、中毒です。

因果関係に基づく副作用の分類

米国医薬品局(FDA)では次の4つに因果関係を定め、1と2を副作用としています。

1.Definite:

時間的に明白な相関関係があり、再実験で陽性であり、検査所見で確認できるもの。

  1. 与薬後、納得できる時間経過後に生じる反応
  2. 疑わしい薬物の既知の反応パターンを示す
  3. 薬物の与薬中止で確認される(与薬一時中止)
  4. 薬物の再与薬で再現される

2.Probable:

時間的に明白な相関関係があり、中止により改善されるもの。因果関係が50%以上とみられる。

  1. 与薬後、納得できる時間経過後に生じる反応、または、体液あるいは組織中に薬物濃度が定着しているとき起こる反応
  2. 疑わしい薬物の既知の反応パターンを示す
  3. 患者の臨床状態のまたは患者に施された他の治療法により起こり得る

3.Possible:

時間的な関係がそれほど明確でなく、他の原因も考えられるもの。因果関係が50%以下とみられる。

4.Conditional(条件付、暫定的、仮定的)

  1. 与薬後、納得できる時間経過後に生じる反応、または、体液あるいは組織中に薬物濃度が定着しているとき起こる反応
  2. 疑わしい薬物の既知の反応パターンを示さない
  3. 患者の臨床状態の既知の特性によって合理的に説明できない

5.Doubtful:上記の基準に適合しない反応

医薬品の副作用の発症時期、発症機序による分類

●発症時間

  • 急性 :医薬品服用 60分以内
  • 亜急性:医薬品服用 1~24時間
  • 遅発性:医薬品服用 2日目以降

●発症機序

①タイプA(薬理学的な副作用):Augmented pharmacological reaction

薬理作用の延長、多くは予測可能で用量依存性。有害事象の2/3を占める。原疾患や合併症、併用医薬品、食品などとの相互作用や、患者の遺伝特性により薬物の感受性が高い場合に起こる副作用もタイプAに該当します。

タイプAの副作用のほとんどは致死的ではありませんが、タイプBなどに比べて発現頻度は高く副作用全体の8割を占めるといわれています。

原因薬物の血中(もしくは組織中)濃度が下がるとたいてい副作用が消失するので、使用量の漸減や使用を控える、併用薬物を見直すことにより対応が可能です。

(例) β遮断剤による伝導ブロック(徐脈)、SSRIによるセロトニン症候群、三環系抗うつ剤による口渇、便秘、排尿障害など(抗コリン作用)、CYP2D6欠損の場合のノルトリプチリンによる錯乱など。

  

②タイプB(特異的副作用):Bizarre reaction, idosyncratic reaction

タイプAほど一般的でなく、発現予測できず重篤化することも多い。医薬品そのものの毒性よりも、個々の生体の感受性に依存します。タイプBが発現した場合には、使用を中止し、以後、当該医薬品を避けるべきです。

タイプBの場合、多くは発現機序が不明ですがいくつかの機序が示唆されています。多くはP450酵素による代謝を通じて形成された化学反応性代謝産物(chemically reactive metabolites(CRMs))により媒介されていると考えられています。これは生体内でハプテンとして、体液性または細胞性、あるいはその両方の免疫反応を引き起こします。

(例)アンピシリンを服用したEpstein-Barrウイルス感染患者の95%での発疹、過敏症症候群とHHV6、カルバマゼピン(テグレトール)による過敏症症候群など。

タイプB反応機序

  • 薬剤変化~トリプトファンによる好酸球増多
  • 受容体異常~全身麻酔による悪性高熱
  • 薬物代謝異常~イソニアジド(抗結核薬)による末梢性神経障害
  • 免疫系~ペニシリンによるアナフィラキシー
  • 薬物相互作用~リファンピシンとの併用によるイソニアジドによる肝炎の発現増加
  • 複合要因~ハロセン肝炎

③タイプC(蓄積反応)

医薬品が体内に蓄積されたことに関連しているとされています。発現した場合、用量を漸減するか使用を控えます。

(例)NSAIDs(解熱・消炎鎮痛剤)の長期使用による腎障害、コルチコステロイドによる視床下部-下垂体-副腎の抑制、ベンゾジアゼピン依存、鎮痛薬腎症など。

④タイプD(遅延反応)

通常、用量に依存し、医薬品服用後しばらくしてから症状が発現、または所見として確認されます。発癌および催奇形性の作用もタイプDです。

(例)人工硬膜によるクロイツフェイルトヤコブ病、ジエチルスチルベシトロールによる腟癌、発癌、遅発性ジスキネジーなど。

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