医薬品の副作用各論
①抗リウマチ薬(DMARDs)
メトトレキサート (リウマトレックス) |
骨髄抑制、感染症、間質性肺炎、肝臓障害、腎臓障害、粘膜の炎症。悪性リンパ腫、白血病などのガン疾患が現れることがある。 (禁忌)妊婦、骨髄抑制、肝臓・腎臓疾患、授乳婦 |
ブシラミン (リマチル) |
再生不良性貧血、汎血球減少、間質性肺炎、腎臓障害、肝障害、皮疹 (禁忌)血液障害、骨髄機能低下、腎臓疾患 |
サラゾスルファピリジン (アザルフィジン) |
再生不良性貧血、汎血球減少、間質性肺炎、腎臓障害、肝障害、皮疹、食欲不振、口内炎、腹痛、悪心 (禁忌)サルファ剤、サリチル酸系過敏症、新生児 |
レフルノミド (アラバ) |
肝障害、感染症、間質性肺炎、汎血球減少、下痢、腹痛、頭痛、めまい、タンパク尿 (禁忌)妊婦、慢性肝臓疾患 |
インフリキシマブ (レミケード) |
日和見感染、結核、間質性肺炎、間質性肺炎、肝障害、SLE様症候群、白血球減少、頭痛、発熱、発疹、めまい、悪心、鼻炎、疲労感 (禁忌)重篤な感染症、活動性結核、脱髄性疾患、うっ血性心不全、マウス由来タンパク質過敏症 |
エタネルセプト (エンブレル) |
日和見感染、結核、間質性肺炎、間質性肺炎、肝障害、SLE様症候群、急性腎不全、心不全、感冒、発疹、口内炎、インフルエンザ、発熱、頭痛 (禁忌)重篤な感染症、活動性結核、脱髄性疾患、うっ血性心不全 |
アダリムマブ (ヒュミラ) |
重篤な感染症、結核、SLE様症候群、脱髄性疾患、間質性肺炎、アレルギー反応 (禁忌)重篤な感染症、活動性結核、脱髄性疾患、うっ血性心不全 |
トシリズマブ (アクテムラ) |
アナフィラキシーショック、感染症、間質性肺炎、好中球減少、咽頭痛、嘔吐、腹痛、下痢、口内炎、尿路感染症、発疹、胸痛、結膜出血 (禁忌)重篤な感染症 |
②免疫抑制剤
サイクロフォスファマイド (エンドキサン) |
ショック、アナフィラキシー、間質性肺炎、出血性膀胱炎、肺線維症、骨髄抑制、イレウス、心筋障害、心不全、肝障害、急性腎不全 (禁忌)重症感染症 |
アザチオプリン (イムラン) |
血液障害、ショック様症状、感染症、肝障害、黄疸、発癌、間質性肺炎、下痢 (禁忌)妊婦、白血球数3,000/mm3以下 |
ミゾプリン (プレディニン) |
骨髄抑制、感染症、間質性肺炎、肝障害、消化管潰瘍・出血、糖尿病、全身倦怠感、悪心、発疹、脱毛 (禁忌)妊婦 |
サイクロスポリン (ネオーラル) |
腎障害、肝障害、感染症、白質脳症を含む精神症状、神経ベーチェット病症状、横紋筋融解症、悪性リンパ腫、悪性腫瘍、糖尿病、歯肉肥厚、多毛、高尿酸血症、悪心嘔吐、発疹、血圧上昇 (禁忌)妊婦、授乳中、タクロリムス、ロスバスタチン、ポセンタン、アリスキレン投与中 |
タクロリムス (プログラフ) |
急性腎不全、心不全、心筋梗塞、心筋障害、脳血管障害、血少板減少性紫斑病、血栓性微小血管障害、イレウス、感染症、悪性リンパ腫、膵炎、糖尿病、間質性肺炎、しびれ、発疹 (禁忌)妊婦、サイクロスポリン、ポセンタン、カリウム保持性利尿薬投与中 |
プレドニゾロン (プレドニン) |
感染症、骨粗鬆症、発育抑制、骨頭壊死、動脈硬化病変(心筋梗塞、脳梗塞、動脈瘤、血栓症)、消化管潰瘍、糖尿病、精神症状(うつ、精神失調、けいれん)、ワクチンによる感染症発症、白内障、緑内障、視力障害、高血圧、浮腫、異常脂肪沈着(中心性肥満、満月様顔貌)、脂質異常症、尿路結石、ミオパシー、膵炎、肝障害、多毛、皮下出血、月経異常 (禁忌)生ワクチン投与不可 |
③抗ガン剤
サイクロフォスファマイド (エンドキサン) |
ショック、アナフィラキシー、間質性肺炎、出血性膀胱炎、肺線維症、骨髄抑制、イレウス、心筋障害、心不全、肝障害、急性腎不全 (禁忌)重症感染症 |
フルオロユーラソウ (5-FU) |
脱水、腸炎(下痢、血便、食欲不振)、骨髄抑制、心筋梗塞、汎血球減少、間質性肺炎、腎臓障害、肝障害、皮疹、脱毛 (禁忌)ティーエスワン併用 |
テガフール・ウラシル配合 (ユーエフティー) |
骨髄抑制、汎血球減少、間質性肺炎、腎臓障害、肝障害、皮疹、食欲不振、口内炎、白質脳症を含む精神症状、消化管出血、血尿、悪心嘔吐、倦怠感 (禁忌)ティーエスワン併用 |
テガフール・ギメラシル・オテラシルカリウム配合 (ティーエスワン) |
骨髄抑制、DIC、腸管閉塞、白質脳症を含む精神症状、消化管潰瘍、消化管出血、間質性肺炎、肝障害、腸炎、レイノー症状、食欲不振、口内炎、急性膵炎、悪心嘔吐、倦怠感 (禁忌)骨髄抑制、肝障害、他のフッ化ピリミジン系抗腫瘍薬、フルシトシン投与中、妊婦 |
サイタラビーン Ara-C (キロサイド) |
骨髄抑制、ショック、消化管障害、間質性肺炎、急性心膜炎 (禁忌)重篤な感染症 |
ドキソルービスィン (アドリアシン) |
心筋障害、骨髄抑制、出血、萎縮膀胱、肝障害、食欲不振、口内炎、発疹 (禁忌)心機能異常 |
エピルピジン塩酸塩 (ファルモルビシン) |
心筋障害、骨髄抑制、消化管潰瘍、萎縮膀胱、肝障害 (禁忌)心機能異常 |
パクリタキセル (タキソール) |
ショック、骨髄抑制、アナフィラキシーショック、末梢神経障害、間質性肺炎、肺塞栓、血栓性静脈炎、急性腎不全、難病、消化管潰瘍、腸管麻痺、関節・筋肉痛 (禁忌)重篤な骨髄抑制、感染症を合併、妊婦 |
④抗ガン剤2
ドキセタキセルハイドレイト (タキソテール) |
ショック、骨髄抑制、アナフィラキシーショック、DIC、敗血症、浮腫、大腸炎、末梢神経障害、間質性肺炎、肺塞栓、血栓性静脈炎、急性腎不全、難病、消化管潰瘍、腸管麻痺、関節・筋肉痛 (禁忌)重篤な骨髄抑制、感染症を合併、妊婦 |
シスプラチン (ランダ) |
急性腎不全、ショック、骨髄抑制、アナフィラキシーショック、聴力低下、心筋梗塞、うっ血性心不全、肝障害、末梢神経障害、間質性肺炎、脳梗塞、消化管潰瘍、脱毛 (禁忌)重篤な腎障害、妊婦 |
カーボプラスチン (パラプラスチン) |
急性腎不全、ショック、骨髄抑制、アナフィラキシーショック、DIC、心筋梗塞、脳梗塞、偽膜性大腸炎、肝障害、末梢神経障害、間質性肺炎、脳梗塞、消化管潰瘍、脱毛、口内炎、蕁麻疹 (禁忌)重篤な腎障害、妊婦 |
トラスツマブ (ハーセプチン) |
間質性肺炎、肝障害、腎障害、心障害、脳血管障害、白血球・血少板減少、悪心嘔吐、疼痛、下痢、腹痛、悪寒、聴力障害 (禁忌)重篤な心不全 |
タモキシフェン (ノルバテックス) |
血栓塞栓症、白血球減少、子宮内膜症、視力異常、浮腫、肝障害、間質性肺炎 (禁忌)妊婦 |
アナストロゾール (アリミデックス) |
皮膚粘膜眼症候群、血管浮腫、ほてり、性器出血、頭痛、関節痛、蕁麻疹 (禁忌)妊婦、授乳婦 |
④抗ガン剤3(分子標的剤)
ベバシズマブ (アバスチン) |
ショック、骨髄抑制、アナフィラキシーショック、消化管穿孔、敗血症、創傷治癒遅延、間質性肺炎、肺塞栓、血栓性静脈炎、高血圧性脳症、脱毛、頭痛 (禁忌)喀血既往歴 |
セツキシマブ (アービタックス) |
重度のinfusion reaction、重度の皮膚障害、間質性肺炎、発熱、口内炎、頭痛 (禁忌)重度のinfusion reactionの場合、投与禁止 |
リツキシマブ (リッキサン) |
アナフィラキシーショック、肺・心臓障害、B型肝炎の悪化、黄疸、骨髄抑制、腫瘍崩壊症候群、中毒性皮膚壊死症 (禁忌)マウス蛋白質由来製品に対して重篤な過敏症 |
トラスツマブ (ハーセプチン) |
間質性肺炎、肝障害、腎障害、心障害、脳血管障害、白血球・血少板減少、悪心嘔吐、疼痛、下痢、腹痛、悪寒、聴力障害 (禁忌)重篤な心不全 |
イマチニブメシル酸塩 (グリベック) |
骨髄抑制、肝障害、腎障害、間質性肺炎、筋肉痛、関節痛、肺炎、消化管穿孔 (禁忌)妊婦 |
ゲフィチニブ (イレッサ) |
急性肺障害、間質性肺炎、肝障害、口内炎、中毒性皮膚壊死症 |
⑤抗うつ剤の副作用
抗うつ剤SSRI、SNRIの注意すべき副作用
①Activation syndrome(SSRI-induced activation syndrome)
(賦活症候群)
抗うつ剤のSSRI(選択的セロトニン再吸収阻害剤)の投与初期に多く見られる症状:
不安、焦燥、パニック発作、敵意、衝動性、易刺激性、不眠、躁状態、軽躁、アカンジア(Akathisia or “acathisia”:特定の場所にじっとしていられない)の10症状が定義されています。特に未成年者で若いものほどSSRIによる activation syndromeを来たしやすい。思春期よりも学童期の方が2~3倍起こしやすい(Journal of Child and Adolescent Psychopharmacology, volume 16, 2006)。
また、年齢に関わりなく、抗うつ薬(特にSSRI)の処方開始直後に、未遂を含めた自殺のリスクが上昇するという報告があり、アメリカ食品医薬品局(FDA)から警告が発せられています。
②セロトニン症候群
抗うつ剤のSSRI、SNRIの過量投与で、脳内のセロトニン濃度が高すぎる事によって引き起こされる症状。他の薬剤(モノアミン酸化酵素阻害薬)との相互作用でも起こることが報告されています。セロトニン症候群の症状は、頭痛、めまい、嘔吐、昏睡、死亡などですが、症状は3つの主要な神経系に影響を与える。
- 自律神経系: 体温の上昇、異常発汗、緊張、高血圧、心拍数の増加、吐き気、下痢
- 体性神経系:筋肉の痙攣、反射亢進、硬直、振戦
- 中枢神経系: 混乱、興奮、錯乱、頭痛、昏睡
いずれも多くの精神科医やサイコロジストの間では、うつ病そのもので起こると解釈されていますが、現在では抗うつ剤(SSRI, SNRI)の投与によって起こることが証明されています。
③中断症候群
抗うつ剤のSSRIの投与中止時に脳内のセロトニン濃度が急激に低下する事によって引き起こされる症状。頭痛・めまい・吐き気・電撃痛などが起こるため内服から離脱するのが難しい抗うつ剤(薬効力価が高く、半減期が短いもの:パロキセチン)がある。投与量が多く、投与期間が長いほど中断症候群の症状が強く出る。
抗うつ剤の中断によって内服前のうつ症状より悪化することがあるため、抗うつ剤の減量をスムーズに行えない場合がある。
④悪性症候群(Neuroleptic Malignant Syndrome)
抗うつ剤の投与量が多く、投与量を急激に変えた場合に起こりやすい。筋肉の硬直、発熱、自律神経異常、せん妄などの致死的な副作用が起こる。抗うつ薬のほか、ブチロフェノン系、フェノチアジン系などの定型抗精神病薬、炭酸リチウムなどのさまざまな向精神薬によって生ずる。また、アマンタジンなどの抗パーキンソン薬の突然の服用中止によって発症することもある。