乳がん(ガン、癌)の治療

乳がん(ガン、癌)の治療1

まず現代医療の乳がん(ガン、癌)治療をまとめます。

  1. 手術療法
  2. 放射線療法
  3. ホルモン療法
  4. 分子標的治療
  5. 化学療法

この中で重要な①、③、④の治療法について説明します。

  • ①乳がん(ガン、癌)手術治療
  • 非定型的乳房摘出術(オースチンクロス)、乳房温存術など美容的に優れている縮小手術が主体となっています。これにリンパ節郭清が加わります。
  • ③ホルモン療法
  • 乳腺、乳がん(癌)がエストロゲン依存性に増加することを利用して、ホルモンの働きを調整して乳がん(癌)細胞の増殖を抑制する治療です。エストロゲン受容体がある乳がん(癌)に対して行われる治療です。
  • タモシキフェン:エストロゲン受容体を抑制します。副作用として子宮がん、血栓症などがあります。
  • LH-RHアゴニスト(あるいは卵巣破壊):エストロゲン生成そのものを阻害します。
  • アロマターゼ阻害剤:脂肪組織でアンドロジェンからエストロゲンが生成される際に働くアロマターゼという酵素を阻害して、エストロゲンの生成を抑えます。
  • *アナストロゾール(アリミデックス):閉経期の女性のホルモン感受性乳がんにはタモキシフェンより効果あるとされています。

  • ④分子標的治療
  • 乳がん(癌)、とくに転移性乳がん(癌)のなかにはヒト上皮増殖因子受容体2(HER2)という増殖因子の受容体が過剰発現しているものがあります。このような乳がん(癌)には、その受容体に対する抗体(トラスツマブ:ハーセプチン)が使用されます。

いずれも対処療法ですが、乳がん(癌)の場合は早期でも全身へ拡大・転移する性質が強く、画像では発見できない微小な転移があることが判明しています。したがって、手術治療でなく上記の様々な治療法が組み合わされています。

乳がん(ガン、癌)の治療2

乳がん(ガン、癌)の治療、転移のない場合は、手術だけで完治することがあります。しかし、転移がすでにある場合や再発乳がんの場合は、放射線治療や抗がん剤(抗ホルモン治療)を組み合わせていくため、患者さんの体にも多大な負担がかかります。

乳がん(ガン、癌)の治療は、極力卵巣がん細胞の拡大を抑え、同時に自己治癒力を引き出していくことに集約されます。

乳がん(ガン、癌)の発生の原因となる酸化ストレス(感染、重金属、紫外線などの放射線など)を除去しながら、現存する乳がんの拡大を防ぐことが治療の柱となります。

乳がん(ガン、癌)の発生の原因となる酸化ストレスを生活習慣改善で除去し、三大療法や自然治療を併用して現存する乳がんそのものの拡大・転移を抑えていきます。

乳がん(ガン、癌)治療の概要は、

  1. 乳がん(ガン、癌)細胞の拡大をストップする
  2. 生活習慣、環境要因を整えることで酸化ストレスに耐性をつくる
  3. 自己治癒力を引き出す

この治療方針は乳がん(ガン、癌)治療のゴールデンスタンダードです。乳がん組織の拡大・転移を防ぎ、時間をかけてゆっくり生活習慣改善を実行し、自己治癒力を引き出していくという統合治療が乳がん(ガン、癌)の治療戦略となります。抗ガン剤を使用する場合は、副作用を軽減する方法も併用していきます。

乳がん(ガン、癌)の手術治療1

乳がん(ガン、癌)の手術治療は、以下の3つに大別できます

  1. ハルステッド乳がん切除法
  2. 胸筋保存乳房切除術
  3. 乳房温存療法

1~3の順に乳がんの切除範囲が縮小されていきます。ハルステッド法は乳房だけでなくその下にある大胸筋も一緒に切除する拡大手術ですが、実はこの3つの乳がん手術成績(予後)にほとんど差がありませんでした。

考えてみれば、当たり前なのですが、乳がんの最大の問題点は転移だからです。乳がんそのもので命を落とすことはなく、脳、肺、骨などの転移によって生命の危険にさらされるからです。

現在の乳がん手術(ステージI,II)は、「乳房温存手術+腋下リンパ節郭清」が標準術式です

これに術後放射線療法、そして化学療法、ホルモン療法を加えます。

乳がんの手術治療2

乳がん抗体医薬ハーセプチン(トラスツズマブ)について

乳がんの乳房温存術について

  • 乳がん腫瘍径3cm以下、画像による広範な浸潤がない、多発乳がんのない症例に施行されます。術後の放射線治療は標準的治療となっており、乳房内再発を減らすと報告されています。

乳がん(ガン、癌)の手術併用治療

乳がん(ガン、癌)の手術治療でリンパ節転移のある場合の併用治療をまとめます。

乳がん患者さん 手術併用治療
閉経前、エストロジェン、プロジェステロン受容体陽性 抗ガン剤+タモキシフェン±卵巣破壊(性腺刺激ホルモンアナログ薬)
閉経前、エストロジェン、プロジェステロン受容体陰性 抗ガン剤
閉経後、エストロジェン、プロジェステロン受容体陽性 抗ガン剤+タモキシフェン 
閉経後、エストロジェン、プロジェステロン受容体陰性 抗ガン剤
高齢者 タモキシフェンエストロジェン、プロジェステロン受容体陰性なら抗ガン剤

がんの手術治療3

  • 乳がんのリンパ節生検について

乳がんが最初に転移する腋窩リンパ節を探し、それに乳がんの転移がなければ腋窩リンパ節郭清を省略することができます。これをセンチネルリンパ節生検といいます。色素とアイソトープを用いて腋窩リンパ節に乳がん組織の転移がないかを調べます。

米国臨床ガン学会(ASCO)では、臨床的に乳がん腋窩転移陰性例に対して、乳がんの腫瘍径が5cm未満の場合に行うように奨励されています。

腋窩リンパ節郭清の問題点は、術後に上肢のリンパ浮腫が起こることです。
センチネルリンパ節生検はまだ保険適応がありませんが、これで乳がん腋窩転移陰性と診断できれば、手術時間が短縮され、術後後遺症をなくすことができます。

乳がん(ガン、癌)の抗がん剤治療と問題点

乳がん(ガン、癌)の抗がん治療は、今のところ乳がん患者さんの生命予後や生活の質を改善するというしっかりとしたエビデンスはありません(Lancet 1998; 352: 930-942 etc.)。現在主に使用されている乳がんに対する抗ガン剤は以下のものです。

  • CMF(サイクロフォスファマイド、メソトレキセート、フルオゥユーラシル)

  • サイクロフォスファマイド(エンドキサン)
      アルキル化剤、放射線類似物質、主な副作用に出血性膀胱炎
  • メソトレキセート
      代謝拮抗剤、主な副作用に骨髄抑制、間質性肺炎
  • フルオゥユーラシル(5-FU)
      代謝拮抗剤、主な副作用に骨髄抑制、皮膚炎、吐下血

  • ドキソルービシン(アドリアマイシン、アントラサイクリン
      放射線類似物質、主な副作用に心毒性(動悸、息切れ)、骨髄抑制など
  • エピルビシン(ファルモルビシン、アントラサイクリン)
      放射線類似物質、主な副作用はドキソルービスンと同じだが、乳がんに対する薬効は劣る結果がでている。

  • 抗エストロジェン抗がん剤:タモキシフェン(ノルバティックス)
      エストロジェンの作用を妨害する。副作用は更年期障害、月経前症候群(抑うつ、顔のほてり、イライラ)。子宮がん、子宮内膜症を誘発する危険があります。

いずれの抗がん剤も重篤な副作用をもつために、著しく生活の質がおかされます。効果も限定的で使用に関しては、十分な注意が必要と考えます。

乳がん術後補助療法

乳がん術後補助療法について

ホルモン療法、抗がん剤療法、抗体療法に分けられます。

  • ホルモン療法
    閉経前:LH-RH-agonist(ゴセレリン)、タモキシフェンが使用されます。
    投与期間についてのエビデンスはありません。
    閉経後:アロマターゼ阻害剤(レトロゾール)が使用されます。

    • サンアントニオ乳がんシンポジウム(2008)では、乳がんリンパ節転移例に最初からアロマターゼ阻害剤(レトロゾール)を投与するものはタモキシフェンを最初に投与する群より成績が良いことが報告されました。
  • 抗がん剤治療
    アントラサイクリンが中心となっています。
    乳がんリンパ節転移ではこれにタキサンを追加します。
  • 抗体療法
    乳がん組織にHER2陽性例ではその抗体であるトラスツズマブが使用されます。抗がん剤治療終了後に1年間(3週間ごと)点滴投与が行われます。また、HER1, HER2の両方をブロックするラパチニブ、血管内皮増殖因子を標的とするベバシズマブ(アバスチン)、血管内皮増殖因子および血小板由来増殖因子受容体のチロシンカイネースという酵素を阻害するスニチニブの乳がんに対する治験も行われています。

乳がんの予後について

  • 全乳がん組織量が最も重要な乳がんの予後を左右する因子です。
    TMN(T:腫瘍の大きさ、M:遠隔転移、N:リンパ節転移)ステージングで評価いたします。
  • その他の乳がん予後の指標
    (重要な順から)
    1. 乳がん組織のエストロゲン受容体、プロゲステロン受容体が陽性
      →生命予後が良好
    2. 乳がん組織のHer-2/neu ガン遺伝子の過剰発現
      →生命予後が悪い
    3. 乳がん組織型が未分化
      →生命予後が悪い

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